2011年1月15日土曜日

龍馬のつくりかた




「龍馬伝」「白洲次郎」「ハゲタカ」といったNHKを代表するドラ

マをしかける演出の大友啓史さんが昨日SFCにきて約2時間の講演

をしてくれた。タイトルは「私の映像制作論」。



講演は主に龍馬伝を用いて大友さんの考える映像制作の在り方を話

してくれた。


思ったことは、テンションが高くて男くさい割にスゴく緻密に土台

を固めていくこと。色んな人の意見や色んな考え方や色んな龍馬像

があるなかで、どうしたら自分の価値観や考えをカタチにしていけ

るか。


ってか大河ってつまんなくない?

ってかなんで歴史モノのカツラってあんなダサイの?

ってか髷ってなんであんな男根みたいなヤツしかないの?


ここまでは思うだけなら誰でもできる。

次に形としてあらゆる反対意見をかわしながらChangeしていかない

といけない。ここのストイックさに心底驚いた。


それは根拠をとっていくということ。様々な資料を元に当時の様子

を調べまくり、直筆の手紙まで辿り着いてそれをなお読みこみ、龍

馬の想いや人としての特徴などをあぶり出していく。そして歴史上

の偉人・坂本龍馬ではなく、人間・坂本龍馬を客観的に見つけてい

く作業の中で現代版龍馬としての骨格が完成していく。最初のお客

さんであるスタッフとそういったものを共有して、他人の視点に触

れさせる中でさらに形にしていく。



そうなってくると、強い。



「大河とはこういうものである」「龍馬とはこういう人である」と

いうしきたりや固定概念に対して「それって根拠ないじゃん!俺の

龍馬は違うぜ」と客観性をもって言える。

自分がこういう龍馬をやりたいというところから龍馬をやるにはこ

うやるしかない、というレベルまでいけちゃう。

龍馬は当時の常識や状況を変えようとした。だったらその龍馬を描

く俺たちだって変わらなきゃダメじゃん!と言えちゃうのだという。



ある意味で科学者たちのそれと似ている気がする。


いやいや脳って疲れないから。

ほらこの数値みりゃわかるでしょ?

みたいな。



つまり根拠を見つけると方法論が見えてくる。


という話だと俺は思いました。



これってホントにそれでいいの?

これって元々はどういう意味なの?



原点や根拠に立ち返り解決策を見つけ出す。

このサイクルを龍馬伝をつくる中で無限に繰り返しながら少しずつ

つくりあげていったんだろうなぁ。




あと個人的に好きだったのは、イチローの例え。

世界最高のバッターであるイチローですら打率は3割ちょっと。つ

まり残りの7割は打てていない、つまり失敗している。だったら俺

も仕事をする中で8割失敗したって大丈夫だろうと。もちろん失敗

を予定して失敗するわけじゃないけど、失敗したからそれがムダだ

ったなんてことは絶対ないくて。その8割が血肉に変わって2割の

成功の糧になっていくのだと。



この話は読書の例えとして、松岡正剛さんの『多読術』という著書

の中で言っていたことと完全シンクロ。

読書だって全部の本から吸収してやろうとか、頭から終わりまで完

璧に理解してやろうとか思う必要はない。イチローだって打率3割

なのだから、読書も3割でいい。10冊読んで7冊はしっくりこなく

ていい。けどその7冊があるから3冊の良読があり、後から必ず繋

がりをもって意味になるときがくると。



実際講演の最中には過去につくったプロレスを題材にした1分間ド

ラマというのも見せてもらったんだけど、まぁいわゆるNHKのコメ

ディという感じで。

大友さん自身はこれがあるからハゲタカのような作品がつくれると

言われていたけど、変な話、やっぱりこういう仕事もしてるんだな

ぁと思ってしまった。



人生五分五分なら上等、でしたね。


失敗してもいいと思うと、ずいぶんモチベーションも変わってくる。



まだどのジャンルに進みたいかはわからないけど、なにをやるにし

も「方法」が大事。貴重なお話をどんどん自分の血肉にしていき

いとテンションのあがった講演だったぜ。


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