2010年11月27日土曜日

院内会議とディスコミュニケーション

一昨日、祝島の原発建設に関する院内会議が永田町にある衆議院議員会館で行なわれたので参加してきた。

永田町や国会議事堂前、小学6年の社会科見学で来たくらいの記憶しかなかったので日本の政治中枢に行くことがちょっと新鮮だった。



議員会館は国会議事堂の裏側にあるのだが、その前の通りでは何組かの団体がデモをしていた。日中問題や尖閣諸島、辺野古米軍基地などデモ人数も対象も異なるが、それは確かにデモだった。声を合わせて自らの意思を国会の背中に向かって叫んでいる。もちろん、うんともすんとも、国会はリアクションをしない。ましてや議員らしき人の影なんてない。本会議中だったらしい。もう慣れたかのようにその様子を見ながら平然と周囲に立つ警察官。通行人も彼らに気を止める人はほとんどいない。道の反対側では国会見学ツアーだろうか、オジさんオバさんが列をなしてペチャクチャ話しながら行進してる。

俺が知らないだけか、そもそも知らされていないのか。普段から生活していて人々は互いに様々なテンションがあることを感じるが、こんなにも断絶されているとは思わなかった。なんだか今の日本は、単一民族であり(これは語弊がある?)、均一の言語を扱う共同体であるはずなのに、ここまで共通意志を持たず、悪い意味で意識のるつぼ状態になっている。ミックスされた文化ならまだしも、互いの色が絵の具のように交わることなく肩身を狭くしながら目を閉じている。渋谷のギャルも、秋葉原のオタクも、新橋のサラリーマンも、銀座のセレブも、下北沢の売れないミュージシャンも、みんないるから日本は魅力的だ。けどそれが、俺には完全に断絶された個々の孤島で生活しているように見える。対岸へと泳いで渡る人はあまりいない。



そんな様子を前にいきなりドキドキしながら、歩いていくと議員会館が見つかった。とてもきれいで広い建物。通行パスを受けとって会場に到着した。入り口で受付に名前を書くと早速スタッフの方に声をかけられた。

「どうしてこの会議を知ったの?」

「以前にも参加したことはある?」

新顔であることは勿論だが、みなさんの気を引いたのはそれよりも多分俺の若さだろう。最終的には80人ほどの参加者がいたそうなのだが、20代と思われる人はほとんど見当たらなかった。人の年齢を当てるセンスはあまりないが、それでも上関原発反対運動をしている人達は、みなさん40代〜50代くらいに見えた。




今回の院内会議の主催者であるDAYS JAPAN編集長の広河隆一氏の話が始まる。

俺の知らない単語も多々あったが、それでもわかりやすくかつ広い知識を分散させながら進めていた。原発の危険性を示すスライドはやはりチェルノブイリでの被害を例に。

話の途中で広河氏がさらりと言った。


「加害者は被害を隠す。それはフォトジャーナリズムの鉄則です」


たぶん誰かの言葉を借りたわけでなく、長いジャーナリストでの活動の中で経験としてわかったことなのだろう。

その言葉自体は俺も知っていた。けど「鉄則です」と自分の口から言い切る自信はない。鉄の法則だ。それくらい頑丈な嘘と隠蔽が蔓延っているのだ。

しかもなにがイヤだと言えば、原発の安全神話という全くもって幼稚な嘘のつき方を中電などの電力会社はしているのだ。前回のブログでも書いたが、手榴弾のピンに指のかかった状態で「僕の指は動かさないんで大丈夫ですよぉ」なんて言ってる。それはもはや反対運動者への軽蔑の思いがあるのではないか。




質疑応答の際、意外と誰も手を挙げないので初心者の俺が質問をした。

内容は“なぜそんなにも電力会社は原発推進に固執するのか”と“それらが大手メディアで報道されないのか理由”のふたつ。俺以外の参加者にとってはすでに共通認識だったらやだなぁと思いつつ。


広河氏はまず前者に対して、原発という利益生産システムがポイントであると述べた。原発の場合、材料生成から運搬、建設に至るまで全てのプロセスで電力会社は利益を生み出せるという。一方自然エネルギーは個々人で自給が可能であり、材料費はほぼタダ(らしい。原発と比べればということかな)なので、これで電力会社が儲かるシステムはまだないのだ。つまりすでにあるプラットフォームから新たな開拓もしたくないぞと。俺たちはこのまま変化もせずに殻にこもって天から舞い降りる万札を頂戴しつづけるぞと。ちょっと言い過ぎかもしれないがそう思った。


後者の質問に対する答えはもっと虫の好かないものだった。大手メディアの大株主に電力関係の人が多いから、だそう。株主ね。また新たなワードの出現。株主様々がイヤと言えば報道規制ですか。俺らが知らないまま闇に消えた事件はいったいあといくつあるのだろう。


けどメディアはちょっと違うぞ。もうミドルメディアと個人メディアが強い。いくら隠そうとしても、現場に居合わせた人のつぶやきがリツイートされていけば一瞬で数万人のタイムラインに載る。いつまで株だのと言っているのだろう。UstやDOMMUNEやブログを規制できるか?



てか、電力会社の人の話が聞きたい。俺の想像とどれくらいずれているのか、そして俺や原発反対派のの批判をどのように受けとっているのか。




帰りがけにまたスタッフの方に声をかけられ、

「いやぁいい質問だったよ」

「若い人がもっとこういう問題に取り組んでほしいなぁ」

などなどと少し話をしてくれた。


このとき俺が思ったのは、若いって素晴らしいな、ってことじゃない。いや、少しは思った。チヤホヤされるのも今のうちかなぁなんて。

けどそれ以上に、今このディスコミュニケーションの原因として、確実に存在するのは、若者たちの無関心さだ。若者って言い方は好きじゃないな、なんか別の呼び方がほしい。今じゃその言葉自体になんかもうすでに悪性がある。

勿論それだけじゃない。カネ欲しさで血眼になりながらこの世の歪みをさらに強める上層のオヤジどもがいることも確かだろう。ただしそれは今の俺にとって、実在する人物では知らないし正体もまだ未知だし知らないことも多い。そんなヤツらは嫌いだが、ヤツらを倒す刀はまだまだ研ぎ足りない。

そうでなく、オヤジがエラそうにできるのはその下の世代がもうしんどくなっているからだ。利権と意地の張り合いに付き合わされるくらいならいっそ離れちまったほうがラクだといって、どっか別の島に移住してしまっている。

その気持ちもわかるんだ。俺だって原発反対なんてしてないで、日本全国さっさと自然エネルギーに切り替えて、食や水も自給して、日本文化やサブカルや映画の本でも読み漁りたい。ぶっちゃけ、ね。

けどそういうわけにもいかない。特に俺は波乗りが好きだから、原発の工業排水は海洋生物だけでなく海に入る人間にも悪影響を及ぼす。遊び場を壊されるのはゴメンだ。



人間ってのは万能じゃない。すべてを網羅できない。

だから世界をある程度分けて、その中で思考の方法を見つける。その抽出した方法で世界を見る。分けること自体は問題じゃない。メシ食うときも、腹に入れば一緒だからって、みそ汁とご飯と野菜炒めと牛乳と納豆を全部同じ器にごちゃ混ぜにして食べない。それぞれがそれぞれの器に盛られているから、そこには関係性が生まれ、調和が生まれる。「和」と「輪」をなすのだ。


けど、今はあまりに世界を分けすぎた。

この話をしびれるくらい美しく話すのはやっぱりなんと言っても

分子生物学者の福岡伸一さんだろう。

『生物と無生物のあいだ』を読んでいただけるのがいいと思うが、

なんとなんと、Podcast「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」で福岡伸一さんの講演の回がある。本は苦手だという人もこっちなら、

・音声で聴ける。

・もちろん語り手は実際の本人

・尺もわずか30分弱

と良いコトづくし。今まで通勤通学で聴いてた音楽アルバムを、今回だけはこっちに持ち替えて移動時間を過ごしてみて!ホントに美しいんで。俺はもう一字一句覚えちゃる勢いで聴きまくってる。



最後は福岡伸一さんの紹介みたいになってしまったが、でもそういうことなのだ。

世界はあらゆるところで繋がっている。

祝島近辺の漁場が汚染され低濃度放射能が排出されたからといって、関東に住む俺たちが安全だといえる根拠はなにひとつない。

因果関係なんて森羅万象。

5 件のコメント:

  1. 「じぶり汗まみれ」の福岡伸一さんの回ってなんてタイトル?聞いてみようと思った。それから源太イギリスくるの??

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  2. ひさぶー!元気?
    10/8/24「ある日、ジブリで行なわれた、ある科学者の講演会」てヤツ。
    生きることに迷いや疲れがあったら、聞くべきPodcast No.1。

    イギリスはぁ、とりあえず1月初頭のタイミングは難しそう。
    行けるとしても2〜3月だな。

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  3. 六ヶ所村のことはメディアでよく取り上げられていたから知ってたけど。祝島ってのは知らなかったな。
    遊び場は守らなきゃね。
    ナイスな情報ありがとう。

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  4. けんとさん
    中国電力にはひとりのサーファーもいないんですかねぇ。
    前の日記に貼り付けた祝島のドキュメンタリー映画、
    予告編ならYoutubeで観れますのでぜひ。
    ガツンときます。
    おじちゃんおばちゃんとともにサーファーも、戦わねば。

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  5. 久々に源さんのブログ見たら、インテリすぎて崇高すぎて、コメントするのが恐れ多いっ笑
    私は電力会社のことなんてちっとも考えてなかったわ。祝島のことも知らなかったわ。
    勉強不足ね!

    最近会わないねー!

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